らんぷの仕業

s’il vous plait  よろしくお願いします。

西成ゴローの四億円

今や星野リゾートも建つ西成が舞台の過激にして浪花節なアクション映画の快作

右側が前編。左が後編(死闘編)

 

実に久しぶりに映画のレビューをアップします。映画は観てるんですけどね、他に書きたいことが多すぎて(その割には書いてない)ついつい等閑(なおざり)にしていました。

一昨日8月19日はバイクの日だったそうで、ちょっと遅れたけど(PCのせいです)バイクの登場する映画をご紹介。と言ってもあまり知られていない映画。ブロ友さんや私が(勝手に)訪問させてもらってる映画通ブロガーさんもレビューされていない。うーん、タイトルで敬遠させてるのかな、などと考えつつ…

 

このタイトル。私の知る限り、タイトルに数字の入っている映画の中で、その数字が一番大きいのがこの作品です。他にあるかな、もっと大きな数字の映画。え、「居酒屋兆治」? 確かに。でも、ここはちょっとそう言うのは無しで。

4億って…1968年12月10日に起きた3億円事件よりまだ1億も多いやん!

タイトルが西成ゴローだからね、西成に住むゴローと言うオッサンが4億を手にしてそれをどう使うか、そんな映画かなと思ったらちょっと違いました。西成に住むゴローと言うオッサンが4億を手に入れるために危ない仕事に手を染めて行くダーティアクション映画でした。R12ですから話もキツけりゃ画面もキツい。それでいてどこか現実離れしてて漫画っぽい。でも漫画が原作ではない。(漫画の方が現実的かも?)

こういうタイトルの映画にすぐ「観たい」と反応する自分が正直ちと恥ずかしいのだけれど、もう私は「観たい映画しか観ない」ことにしてるので、正直を貫いて良かったなと思える面白い映画でした。 どんなストーリーかと言うと…

 

この男が主人公のゴロー 西成に住む記憶喪失の労務者のオッサン

 

ある事情で記憶喪失になった凄腕の元諜報部員、気が付くと西成に住んでいた。ジーナ・ディヴィス主演の「ロング・キス・グッドナイト」を思い出す設定。

ただ腕っぷしが強く、何も覚えていないが人を殺したことがあるらしい、そんなところから周りの連中に西成ゴローと呼ばれている主人公…

ジーナ・デイヴィスは記憶をなくしている間に普通の男と結婚をして娘も生まれて普通の主婦として平和に暮らしていたがある日…と言う風に進んでいくが、西成ゴローは家族もなく孤独だ。夢も希望もない。「殺したる」と突っかかる半グレに「殺してくれてもエエねんけどな」と寂しく答える哀しい男だ。

ある日、一人の女にすれ違ったことで過去を少しづつ思い出してゆく。女はゴローの妻だった。

かっては大学教授だったが今はSM嬢を生業にしている。夫が人殺しで刑務所に入ったために職を追われていた。二人の間の幼い娘は心臓病で余命2年、渡米して手術するには4億の金が要る。再会した妻から聞かされたゴローはともかく金を作ろうとする。

そしてチラチラと思い出す過去…自分は本当に人を殺したのか…

ゴローは500万で自分の片目と腎臓の一つを闇金の姉妹に売る。

え? 何それ? 主人公が右目と腎臓を失くすの? はい、売ります。片目と腎臓一つを失くした。えええ!それでどうなるの?

 

闇金姉妹の姉 狂暴な女だけどこの後少しづつ心情に変化が…

 

闇金姉妹の妹 かなり狂暴にして品性も知性もない でも可愛い顔してるね。

 

何と(目を)買い戻してくれた男が登場するのだ。(そんなアホな)ゴローが政府の秘密諜報部員だった時の同僚だ。この男を津田寛治が演じてます。あ、主役のゴロー役は上西雄大と言う俳優。この映画の脚本家で監督でもあります。中年のオッサンです。(劇中、やくざの親分役の長原成樹にオッサン呼ばわりされて言い返してますが)

 

昔「ナイトスクープ」に出てた長原成樹闇金姉妹と対立するやくざの親分役で出てます。あ、このシーンは彼の所持金をレジの音と共に画面に表示してます。煙で見えてないけど。

 

主人公のゴローは冴えない顔してます。こんな言い方したら非常に申し訳ないけれど、底辺の土地をうろつく姿が様になっている俳優です。二枚目とも言い難い。(でも不細工でもない。劇中、けっこうオバハン連中にモテてます。でも女性と絡むシーンは似合わないと思う。実際そんなシーンは出てこない。その点、津田寛治はセクシーだわ。女を操るのに慣れてそうで。

 

主人公ゴローは記憶をなくしているが滅茶苦茶強いのです。 思い出した記憶の中で。

 

津田寛治 ゴローの元同僚だが実はゴローを陥れたのはこいつだ。

 

ゴローの眼を闇金姉妹から買い戻して両目を元に戻して、彼に高額報酬で殺しの仕事を持ちかける。ゴローは娘のために殺し屋稼業を始める…(拳銃を持ちバイクに乗って)

 

♫オートバイが空飛べば事件が起きた時なのさ~

♫二丁拳銃火を吹けば悪者最後の時なのさ~

(↑「まぼろし探偵」の主題歌で遊びました。無視してください)

 

西成が舞台の映画はこれまでにいっぱいあるけれど(魅力的な作品が多い。破れかぶれのバイタリティに溢れてる)西成が舞台のアクション映画ってあったかなとか思いつつ後半の「西成ゴローの四億円 死闘編」を観てみると…

もうゴッタ煮。やくざ同士の縄張り争いに、エセ宗教団体で実は秘密結社(木下ほうか・加藤雅也)に、そしてゴローに家族を殺されたと思い命を狙う日本のフィクサー(奥田英二)、韓国マフィアの大ボス(石橋蓮司)、諜報部と拘わりのある女性大臣(なんと松原智恵子) そこへ感染症パンデミック、どうやってこの終止の着きそうにない話をまとめるんだろうと思ってたら何だかあっさりと解決をつけてしまっている。その辺が甘い。

そして最後は妻と娘、西成の知り合いたち(笹野高史や仁科貴)とのふれあいと言う浪花節

もう少し整理してほしかった。(正直、ストーリーが分かりにくい。声も聞き取りにくい。そのくせ銃声は大きく響く)でも面白かったわ。

ゴローの標的への殺し方がエグい。弾一発では殺さない。まず相手の耳を撃ったり。涼しい顔をして標的をもてあそぶ。さすがは元秘密諜報部員それでもあまり残酷に感じないのは標的がやくざや悪党ばかりだからか。標的の中に週刊誌記者(波岡一喜)がいる。この記者はゴローの妻の顧客でもあったためにゴローに個人的に恨まれたかも)

個性的な俳優も多く出演してて、その他にもゴローを取り巻く西成のアクの強いおっさん、おばはんがいっぱい出てくるのだけれど、一番印象的なのは闇金姉妹。品性など皆無、金を返せない人間などゴキブリ程度にしか思っていない狂犬のような姉妹だ。特に姉の方。徳竹未夏と言う女優さん。美しくもなく(m(__)m)愛嬌などみじんもなく凄みがある、これまでで言えば絵沢萌子伊佐山ひろ子、李麗仙、藤山直美の類の個性的な(魅力を持った)女優の系統かな。最近で言えば…山田真歩とか江口のりこ…(ちょっと違うなあ)

この姉がゴローに段々と興味を持ち傾倒して行き、窮地のゴローを助けることになる。そして姉はゴローに2兆円を請求する。そんな金は無いと言うゴローに「ほな、うちの男になれ」 あはっ、この映画の中のセリフで私が一番好きなのがこのセリフです。(この姉のキャラクターが無かったらこの映画をこんなに好きになってたかどうか…)

 

 

この狂犬姉妹にも辛い過去があった。詳しい説明はされていないが、二人がまだ幼い頃、血まみれの姿で逃げているところを石橋蓮司に助けられて傘下に入ったのだ。

 

石橋蓮司はいい役やってるけど、幼い姉妹をこんな粗暴な女に育てたらアカンわ。

(姉妹が蓮司を慕っているので優しかったんだろうと思うけど)

 

大声で怒鳴る女性大臣役の松原智恵子は全然似合っていない。日活の清純可憐な娘役の多い松原智恵子の柄じゃない。(最近CSで観た、同じく主人公が五郎の名を持つ渡哲也の「無頼シリーズ」で五郎に一途な娘を演じてた) 友情出演になってたけど、山本陽子あたりの方が適役なんじゃないかな…

 

松原智恵子だけじゃなく登場人物全員、こんな風に所持金を表示されてます。

 

新興宗教を隠れ蓑にした秘密結社、テンキングのボス 木下ほうかってこんな胡散臭い役がピッタリだけど、もう復帰は無理…?

 

木下ほうかの信者にして部下 フランシスコ・ザビエルみたいな髪型でゴローにハゲ呼ばわりされては切れます。

 

ゴローに息子を殺されたと思い命を狙う日本のフィクサー (実は確執のあった息子の策略だった)

フィクサー、最後にゴローの妻の口座に4億振り込みます。(ネタばれ)



その他の登場人物

ゴローの妻 大学教授からSM嬢って… 世な中そんなに非情なのかな。

 

ゴローの娘 何でこんなに可愛いの? あ、お母さん似なのね。良かったね。

娘は一度も自分の父に会ったことが無い。ゴローは妻に自分に仕事を秘密にしていたのだ。殺人の濡れ衣で警察に捕まり、そのため妻に恨まれていた。

父親はようやく会えた娘に「しばらく会えないけど」と言って別れる。

 

ゴローの西成の仲間の笹野高志 息子との再会が叶いそうなので自分の片目と腎臓を売って息子に渡すために金を作る。だが息子に抱かれて西成を出て行ったのは遺骨になった彼だった…

 

浪花節だなと呟きながらゴローに諜報の仕事の復帰を促す津田寛治

こいつ、裏でゴローを騙しときながら改心したのか、なぜこいつも片目になったのかとかの説明は無かった。。。説明してほしいわ。

でもツダカンの片目姿だけ何でこんなにカッコイイの? ゴローも笹野高志も目を摘出された時はガーゼを当てて痛々しそうだったのに。

 

「俺は西成の西成ゴローや、ここで生きて行く」と主人公は応える。

そんなゴローに「ゴローちゃん」と声をかける闇金姉妹

 

なに、この明るいラストシーンは。(右に写ってるのはツダカンが被ってた狼のかぶりもの)

 

CSで放映してたので観ました。派手で残酷なシーンやエロいシーンもありです。眼を覆うほどではないけれど。最終的にはツダカンの言う「浪花節

同性だけど社会性ゼロの女の子二人のスナイパーを描いた「ベビー・ワルキューレ」よりもこのオッサンに共感(ちと違うかな)したのは舞台が大阪の西成だから?

西成、と言っても広いのです。私の友人に今は阪急沿線の住宅街に住んでいるけれど、結婚当初、西成区の津守に住んでいた人がいました。津守は住宅地です。でも彼女は色んな書面に自分の住所を書く時「西成区」と書くのが嫌で嫌で仕方がなかったと言っていました。

この映画の西成はいわゆる、あいりん地区、かって釜ヶ崎と呼ばれた辺りが舞台です。最寄り駅はJRと南海電車の乗換駅である新今宮あたり。去年の春、この地に星野リゾートのホテルが誕生しています。この地は変わって行くのだろうか?

私の周りでは「変わらへんわ。そのうち星野リゾートの方が撤退するわ」と言う意見の方が多いのだけれど…

 

todorirannpu.hatenablog.com