らんぷの仕業

s’il vous plait  よろしくお願いします。

「果てしなき情熱」笠置シヅ子が出てます。歌います。

4年ぶりに映画館で映画を観ました。

シネ・ヌーヴォと言うユニークな映画館です。 ↓シネ・ヌーヴォのHPから。 

笠置シヅ子の命日、3月30日(「ヴギウギ」終わったね)から始まっています。

 

友人と映画の話をしていて私が「シネ・ヌーヴォに行ったことが無い」と言う話から「それじゃ行こう」と誘われて出かけました。友人は20年ぶりだとか。この映画館、そんな頃からあったなんて全く知らなかった。

4月1日が都合が良い、で、この日の上映作品が「銀座カンカン娘」と「果てしなき情熱」の2本。「銀座ー」は二人とも見たことがあるのでもう1本のこちらの作品にしました。

 


この映画、全編を作曲家、服部良一の歌で綴っています。作曲家の話です。但し書きが出ます。服部良一氏がモデルではないと。そりゃそうでしょ。モデルと言ってしまったら訴えられるわ。だって酷いもん。この主人公。クズよ、一言で言えば。

タイトルは「果てしなき情熱」と言ってるけど何が情熱?どこが情熱? 最初から最後まで「俺はダメだ」とほざいて酒飲んで倒れてるクズ男が主人公。それを献身的に支える女。この構図、まんま演歌の世界。演歌の世界では未だにこんな構図が存在するのはどこかに需要があるからかも知れないが。演歌ならまだ我慢できる。せいぜい3~4分だから。これを1時間以上見せられるのは苦痛以外の何物でもない。これが1949年の市川崑、才能開花まだまだです。

一応、服部良一の音楽で始終するので彼と名コンビを組んでいた笠置シヅ子が出ています。主人公を叱り飛ばすキャバレーの人気歌手。叱り飛ばしてばかりだけど本当は…気に掛けているのは充分伝わるけど、それ以上の感情を持ってるようには思えない。子供もいるしね。気のいい女だとも分かるけど。それだけに妻の献身ぶりが重すぎる。こんなに尽くしてるのに夫の心は他の女に…

生涯でたった4度しか会ったことのない女、しかも最後に観たのはその女の死に顔。

この女に初めて出会った湖から「湖畔の宿」を作り、3度目の夜の大久保駅(「おほくぼ」と駅名表示が出てた)で再会して「夜のプラットホーム」を作り…しかし、この女に2度目に出会った時、主人公は暴漢に襲われそうになっているこの女を助けたために暴漢を誤って殺してしまい1年間の刑務所暮らし。待っていてくれたのが妻になる女性、このヒロインが可哀そうすぎる。何しろ相手の女はその時逃げてるのよ。あの女、警察には届けなかったのかしら。自分を助けてくれた恩人を置いてけ堀にして自分だけ逃げて。そんな女よ。どこが良いんだ。

ラスト、自分には音楽があると海の波打ち際で体を起こし立ち上がる主人公。この時、主人公一人なんだよね。なんで側に妻を立たせてあげないの。妻と一緒に生まれ変わるべきでしょ。

徹頭徹尾、アカン映画です。友人も「こんな暗い映画とは思わなかった」と言ってた。

私は暗いと言うよりむしろ一周して「面白い映画やわ」と思ったのですが。

戦後4年しか経っていないからセットがちゃち。しようがないかな。冒頭に見えるアパートの部屋からの列車。本物じゃないの丸わかり。しかしこの主人公の部屋が、ちょっと日本離れしてると言うか、ベッドがあるし、窓の感じや部屋の雰囲気がフランス映画みたい。笠置シヅ子の部屋はおしめが干してあったりして日本っぽいんだけどね。

海と湖のシーン以外はみんなセットだと思うけど、そのセットに意欲を伺えるかな。

主人公を演じているのは堀雄二。私ら世代なら初代の「七人の刑事」の刑事たちのリーダー(係長)を演じてた人のイメージが強いんだけど、若い頃のこの人、ちょっと上川隆也に似ています。(友人も同意見( ̄▽ ̄)

妻(ヒロイン)を演じてるのは月丘千秋。私、この人の舞台を見たことがあります。昭和49年に京都の南座栗塚旭主演の「燃えよ剣」の舞台化で土方歳三の恋人役を演じていました。で、「果てしなき情熱」のヒロイン役がピンとこなかった。1949年の映画でヒロインを演じるには若すぎると。(「燃えよ剣」の時が42~3くらいだと思ってたから)

映画の配役をボーっと見てたから後で「あれは誰だ」と友人とワイワイ。

シネ・ヌーヴォのチラシを見ると「月丘夢路、月丘千秋」とあったのでヒロインを月丘夢路、もう一人の女を月丘千秋が演じてるんだろうと話してたけど大違い。もう一人の女の役は折原啓子と言う女優さんでした。このチラシ、誰が作ったんだ😠

さて、笠置シヅ子。「セコハン娘」と「ヴギウギ娘」を歌って踊っています。パワフル。私、この人にはコメディ女優のイメージしかなかったのです。私が小学生の頃、土曜日の午後にテレビで「台風家族」と言うコメディホームドラマがあったのです。笠置シヅ子はそのお母さん役を演じていました。「東京ブギウギ」や「買い物ブギ」や「ジャングルヴギ」は知っていたけど女優の副業みたいなもんだと思っていました。この人、本物の偉大な歌手だったのね。「セコハン娘」を聴いた時「この人、歌うまい」と思った途端に泣けました。

それから服部良一。ドラマではこの映画とは似ても似つかぬキャラを草彅剛が演じてて笠置シヅ子の歌ばかり出るので、ヴギの作曲家と思ってたけど、何とまあ上記の「湖畔の宿」も「夜のプラットホーム」も山口淑子が歌う「蘇州夜曲」も淡谷のり子の「別れのブルース」この人の作曲なのね。ウキで検索して驚て喜んだのが東映アニメ「西遊記」の音楽もこの人だと言う事。♪俺は孫悟空孫悟空、生まれついての暴れん坊~ や ♪俺の作ったでたらめの歌~ジャガルジャ~ も、この人が作曲してたのね。

 

朝ドラでやってなかったら知らないままの戦後史の一つでした。蹴っ飛ばしてやりたいくらいのクズ男が主人公の何じゃこりゃな映画ですが、面白い映画でもありました。

 

つづく(続くんかい)