らんぷの仕業

s’il vous plait  よろしくお願いします。

青幻記 -遠い日の母は美しくー 

ずっと観たかった、名カメラマン成島東一郎の監督作品…

f:id:todorirannpu:20210121205112j:plain



 

1973年のキネ旬ベストテンの3位に入った作品で、ずっと観たかった映画です。

木下恵介の撮影助手を経て、吉田喜重の監督第一作に撮影監督としてデビューし、以来、大島渚篠田正浩ら松竹ヌーベルバーグの監督のもとで撮影を担った名カメラマン、成島東一郎の初監督作品。

 

大筋を言うと、主人公(田村高広)の私が、幼い頃に亡くなった母を故郷の沖永良部島で回想する話です。

f:id:todorirannpu:20210121205559j:plain

 

少年の日、私の母(賀来敦子)は夫と死別し別の男(小松方正)と再婚して鹿児島に住んでいた。私はその近くに住む父方の祖父に預けられていた。

街で偶然を装って母に会いに行く私。

f:id:todorirannpu:20210121205012j:plain

 

祖父(伊藤雄之助)の家には祖父の妾(山岡久乃)がいて私を疎んじていた。母は体が弱く再婚相手にも離縁されて沖永良部に帰ることになった。祖父は私が小学校にあがった年に亡くなる。

f:id:todorirannpu:20210121205047j:plain

 

発明狂だった祖父の発明品を売り歩かされる私。

親切な豆腐屋の主が買ってくれる。「お前は孤児院から来たのか?」

f:id:todorirannpu:20210121230529j:plain

 

祖父の家に居場所がなく、妾に虐められている私は母を見送りに行きそのまま船に乗ってしまい、母と一緒に沖永良部に着いてきてしまう。

f:id:todorirannpu:20210121205112j:plain

 

祖母(原泉)と母と私との貧しいが、豊かな自然の中でのささやかな幸せな日

f:id:todorirannpu:20210121205238j:plain

 

島一番の美貌と踊りを称えられていた母は皆に請われて踊りを舞う。

f:id:todorirannpu:20210121205307j:plain

 

さすがに美しく幽玄なシーンだ。

f:id:todorirannpu:20210121205328j:plain

 

f:id:todorirannpu:20210121200647j:plain

 

若い頃から母を思い続けて独身のままの島の男(藤原釜足

f:id:todorirannpu:20210121225841j:plain

 

男を傷つけまいと諭すように男の求愛を断る母

f:id:todorirannpu:20210121225913j:plain

 

ある日、母と二人で磯遊びに出かける。

f:id:todorirannpu:20210121205455j:plain

 

「お母さんは病気だからあなたを抱きしめてあげることができない」と言う母とのつかの間のふれあいの時間が過ぎて行き

気が付くと潮が満ちてきて岸へ戻れなくなっていたのだ。病弱の母は私を何とか逃がして自分は波にのまれる。

f:id:todorirannpu:20210121205518j:plain

 

母の墓で遺骨を洗い直し、東京へ戻る私

「君は東京であまり幸せではなかったんだね。この年になっても母親を忘れられんのだから。いろいろ母親に聞いてもらいたいことがあったんだろ」と島の友人(戸浦六宏)は言う。

f:id:todorirannpu:20210121205821j:plain

 

 

原作は一色次郎の自伝的小説で太宰治賞受賞作品。一色次郎の父親は戦時中、無実の罪で投獄され獄中で結核に罹り死亡しています。(映画では描かれていない)

母親を慕い続ける男の心情を叙情豊かに描いている作品、ではあるけれど、叙情に流された嫌いがあります。ストーリーに起伏がなく平板で、母親の死因が結局、病死ではなく水死と言うのが衝撃に映るのです。

若くして亡くなった不憫な母を思うと悲しくて悲しくて「おかーさーん!」と言う感情を観客に押し付けているようで、こちらは「悲しいのは分かるけど」と反発してしまいます。

撮影監督の腕の見せ所はクリアしたけど、全体監督としては意欲が大きすぎて観客の心を掬い取れなかった感が残りました。

ちなみに1973年キネ旬ベストテン、1位は斎藤耕一監督の「津軽じょんから節」2位は深作欣二監督の「仁義なき戦い」でした。

 

この映画、去年CSで放映されたのでその時に観て、レビューを書くつもりが今日になりました。録画がたまりすぎてます。どんどん掃いてゆくつもりです。「なんじゃこりゃ」な映画が多いので頭を抱えています。。。