孤独な男女が心と体で寄り添ってゆく姿を描いたR18作品
Vパラダイスで放映された2017年作品 タイトルに惹かれて録画して観ました。
主演の井浦新のせりふがボソボソとつぶやくようで聞き取りにくいのと、地元の福島の人の言葉も分かりにくかったので二度見直しました。そのおかげで、二度目にはセリフの良さがこちらに伝わってきた映画です。
R18でハードな濡れ場(ずっとボカシあり)が数回登場するので、ちょっと辟易するんですが、男女の寄り添いって場数が物を言うのではないかと。(「ロミオトジュリエット」は例外だわ)
テレビ画面を撮っているので色んなものが写りこんでますが、気にせずに。(他の方の記事の写真ってなんであんなに綺麗なの?)
ヒロイン由実(黒川芽以)は東日本大震災で兄以外の家族と家を失い、福島で工務店を営むおばの家に身を寄せている。
頼りない夫に代わって会社を切り盛りしている男勝りでさっぱりした性格のおばを演じているのは天衣織女(あまぎおりめ)と言う女優さん。トリバゴのCMで「シニア割り?」と訊かれて「違うわよ」と答えてる女性だそうです。CMと全く雰囲気が異なってますね。
由実はある日、たまたま見つけたパート募集の張り紙で、杉谷(井浦新)の店で昼時だけ働くことになる。小さな店である。
実は杉谷は本名ではない。男は八年前に山の中で倒れているところを助けられたが、記憶を失っていた。ただ料理の腕は覚えていた。
客あしらいも上手く店に溶け込んでゆく由実
夜のパートの女性が辞めることになり、杉谷は夜もうちで働いてくれと頼む。承諾する由実
店の一輪挿しに飾る野花を摘む二人
右のハゲのおじさんは男に杉谷と言う苗字を与えた市役所の福祉課の人(諏訪太朗)と白髪頭の幼馴染の友人(鈴木慶一) 二人とも良い人です。
諏訪太朗はお顔はよく拝見するけれど名前が分からなかったベテラン俳優。鈴木慶一は何とムーンライダースのリーダーだそうです。
月と波がひかれあうように二人は… だが杉谷はどうしても上手く行かない。「消えてしまいそうで不安だ」と。
「あの日(震災)から波の音が消えないの」と訴える由実
叔母が急病で入院し、病院へ駆けつける由実
そこで目が合ってしまった女性(山田真歩)は左足が義足だった。
「腰や右足が痛い時、無くした足の部分に針を打つと何故か右の足がびくびく動いて痛みが取れるんです。気と言うのは見えないところで流れているので気が巡ってない訳じゃないんです。無い足だけど在るんです」と問わず語りに語っていた。
杉谷には待っている女性がいるのでは…そんな不安を抱く由実に(諏訪太朗)が答える。「一年たてば一年の記憶が体の中にある。今は八年分が大将の体の中に貯まってる。それで良いんじゃないか」
ある日、唐突に「東京へ行ってみないか」と由実を誘う杉谷
ホテルで一つになれた二人…
杉谷と由実はホテルの部屋の窓から月を見る。二十六夜の月だ。
「あんなに細いのに輝いてる」「この月の光の中に観音、阿弥陀、勢至の三菩薩が現れて、それを拝むと幸運になれるって言われてるんだって」と由実に説明する杉谷。
東京で河豚を食べた二人。杉谷はそのさばき方を覚えていた。
「免許を取って、うちでも河豚も出しましょう」と由実
二人のささやかで幸せな日々…
一回目はともかくセリフが聞き取れず、二人が絡み合うシーンが鬱陶しくて飛ばして観てたんですが、二回目は音量を上げて観てると「あ、杉谷、こんな事をしゃべってたんだ」
黒川芽以の脱ぎっぷりが悪いのです。そういう契約を交わしてるのかどうか分かりませんが、こういうシーンでいつもブラを着けてるって不自然すぎる。そういう性癖がある設定でもないし。女優は脱いでナンボって時代ではないけれど、ここは女優魂を見せてほしかった。
そんな不満はあるんですが、男と女が寄り添ってゆく時間の流れってこんな感じではないでしょうか。元々こんな静かな映画が好きなので観て良かったと思いました。最初見た時は、これじゃ10年後覚えてるのはタイトルだけかなと考えてたんですが。
ところで二十六夜の月とはどんな月かと言いますと、(映画の中にちゃんと出てるんですが私が写真に撮るとまた余計なものが写りこみます。なにせ場面が暗いので)
こんな月です↓
ちなみに今日、9月13日は旧暦の七月二十六日。今夜の月がまさに二十六夜月です。昔(旧暦)は二十六夜待ちと言って大勢の人がこの月が昇るのを待っていたそうですが、特に一月と七月の二十六夜は盛大だったそうです。
この月、月の出が遅いです。大阪では今夜は実は日付が変わって14日の午前0時32分です。(旧暦の一日(いちにち)の観念は日の出からつぎの日の出までなので、今の暦で日付けが変わろうが関係ないのです)
昨夜は曇ってて月が見えませんでした。今夜は見えるでしょうか。0時過ぎまで起きて月を仰いで幸運をつかんでみましょう。
「二十六夜」ならぬ「二十三夜」 官能的な歌です。