らんぷの仕業

s’il vous plait  よろしくお願いします。

「狼は天使の匂い」 ルネ・クレマンの詩情あふれすぎギャング映画

少年のような大人の男たちのファンタジーフィルム・ノワール


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ほんの2週間前まで聞いたこともない映画でした。

Eテレの「2355」の木曜日の名物コーナー「トビーの映画音楽」でトビハゼのトビー君がこの映画の音楽を紹介したのです。

NHKアナの石澤典夫のナレーションで「不思議の国のアリス」のモチーフが登場するなど、どこかメルヘンぽくて不思議な魅力があり、今もファンの多い映画」と語られました。

「どんな映画だろ、観たいなあ」と思っていたら1週間後にCSで放映があるではないの。こりゃ観なければと録画して、観た映画です。

 

一人の少年が新しい街へ越してきて友達を作ろうとする場面から始まります。窓に飾ってる猫の絵…チェシャ猫… 少年が手に持っているのはビー玉の入った袋。

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あるグループのリーダー格の少年にビー玉の袋を差し出すと、袋を破られビー玉は地面に飛び散って行く… 時は流れて…

 

原題は「ウサギは野を駆ける」と言うような意味らしいです。

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小型飛行機の操縦に失敗してロマ(ジプシー)の子供を死なせてしまった主人公トニー(ジャン・ルイ・トランティニアン)は、復讐のため執拗に追ってくるロマから逃げ続けている。カナダのモントリオール近くまで来た時、人が射殺されるのを目撃してしまう。

被害者はメッセージと金をトニーに託して絶命。撃った二人組の男はトニーが死んだ男から何か受け取ってると思い彼を拉致、車でアジトへ連れてゆく。

トニーは途中で片割れのポールを車から振り落として逃げようとするも失敗。片割れの一人、リッツオはトニーと重傷を負ったポールを連れて仲間の待つ湖の中の小島の中の一軒家に連れ込む。彼らのアジトだ。

ロマに殺されるよりはここにいた方が安全かもしれぬ、そう考えたトニーは自分を泥棒と偽り、彼らの仲間に入って行く。

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結局ポールは助からず死んでしまい、仲間たちはささやかな葬儀を行う。右から、リッツオ、ペッパー、シュガー、チャーリー、トニー、マットーニ

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一味のボスのチャーリー(ロバート・ライアン)とゲームや賭けをやって、他の仲間たちとも親しくなって行くトニー。

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この映画、そんなゆったりした時間が続きます。いったい何が始まるのか、こんな調子でいいのかと思ってしまいます。

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シュガー姐さんは料理上手。タルトやパイや山鳥の丸焼き…楽しそうに料理を作っています。チャーリーの気分次第で彼の愛人であったり、過去に4人の夫がいたり、そしてどうもトニーに惚れたよう。

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チャーリーたちが仕事に出かけた日、シュガーは納屋に隠している消防車をトニーに見せる。赤を地味な色に塗り替えている…

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さて、この映画、2時間以上あるのですが、1時間半くらいは男たちの隠れ家でののんびりした暮らしぶりが描かれていて、間延びしそうですが後半の30分でアクションを起こします。犯罪計画の実行開始。

何故か正装でコンサートなど聴いている6人。彼らの仕事とは警察病院(?)にかくまわれている18歳の少女を誘拐すること。少女は精神的に不安定だが近く始まる大物ギャングの裁判の重要証人だった。(その犯行になぜ、こんな格好でいるのか?)

前席のマットーニの横にシュガーとペッパーが座っています。そして…偶然にもマットーニからストーカーまがいの被害を受けたチア・リーダーの女性、イゾラが彼の前列の席に座っていた。(彼女の通報でこの後、犯行途中にリッツオが逮捕され射殺される事になる)

そして残った女二人、ペッパーの方は重要な役割があるので先に席を立つが、その時、トニーに伝言をと頼むシュガーに告げる。「トニーは私と行くのよ」

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正装の方が地下の駐車場に出入りしやすいから(?)駐車場の車のトランクには武器が積まれている。そこ車に乗って駐車場の壁をぶち破って隣のビルの地下へ。そこからエレベーターで18階へ。

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時期的にマスク着用(1972年だよ)

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しかし、この作戦が説明不足で私、何度か巻き戻してみたけど、よく分らん。このはしご車は納屋で観た消防車を塗り替えたものだとわかるけど、いったいどうやってここに運び入れたの?

18階に駐車場、も分かるけど同じ階に病室がある?

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証人になる少女はすでに自殺していた。ペッパーを身代わりにして

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取引の場へ。相手方から報酬を受け取るやいなや銃を乱射。チャーリーの目的は最初から相手方の全滅か(?) よく分らん。

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マットーニは射殺され、チャーリーも負傷する。チャーリーはトニーにペッパーと逃げろ」と命令するが、トニーはペッパーだけを行かせて自分もようやく戻れたアジトに残る。

ここで初めてお互いの本名を名乗りあって銃を取る。

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敵は警察かギャング団か追手のロマか。それなのになぜか二人でビー玉を賭けて板切れを撃つ。「休業中」の板切れを撃ち抜くと

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 現れるチェシャ猫 またしても不思議の国のアリスf:id:todorirannpu:20200715161348j:plain

 

グループのリーダー格の少年との別れ この少年とリーダー格の少年が後のトニーとチャーリーのように思えるが、それでは年齢が合わない。

単に少年の頃を象徴しているのか。少年のような心を持った男たちの遊びの時間の終わりを示唆しているのか…映画はここで終わる。

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なんか子供のような大人の男たちの寓話的ストーリーになってますが、女性陣も負けてません。三人の個性的な女たち…

ペッパーこと本名はミルナ。死んだポールの妹。やや狂暴。父親はチャーリーの刑務所仲間だった。仕事の後、トニーと二人で逃げる予定だった。(トニーはなんでOKしたんだろう?)

この女優、ティサ・ファーローはミア・ファーローの妹だとか。f:id:todorirannpu:20200715162033j:plain

 

個人的にはこの女性が一番興味深い。マットーニにストーカーされるただのチア・リーダーのようだけど、後半もう一度登場する、記憶力は良いし、隅に置けない存在感を見せます。「お嬢さん」と呼ばれる度に「イゾラよ」と自分の名前をアピールして。この先はシュガー姐さんと親友になるか、いがみ合うか(私感だけど)

ナディーヌ・ナボコフと言う女優さん。この映画しか記録がありません。

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シュガー姐さん。なんで男は料理を手づかみで食べるような小娘を選んで、料理上手な年増を捨てるんだ。だから彼女、コンサート会場で一人残され、イゾラに(一味の一人)と指摘されて警察に連行されると、土壇場で…

(何故か彼女の本名は明かされません。シュガーのまま)

レア・マッサリー イタリアの女優さん。代表作は「好奇心」

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さて、「2355」のトビー君です。(画面が暗いのでいつも要らん物が写りこんでしまいます。無視してね)

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このコーナー、リクエストできるんだ!

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リクエストした人、きっと男性だろうなあ。この映画への強い思い入れのあるファンの一人…

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音楽はフランシス・レイ 静かな美しいメロディです。


LA COURSE DU LIEVRE A TRAVERS LES CHAMPS~狼は天使の匂い ~FRANCIS LAI

 

この映画に強く惹かれるファンがいるのも分かる気がします。独特の詩情に酔う心地よさがある映画なので。

でも女の私には男たちにはあまり感情移入しませんでした。トニーが何故ペッパーの方を選んだのかさっぱり分かりません。(優柔不断で実はロリコンかい)

私より一日早くこの映画のレビューをアップしていたブロ友さんが、犯罪のプロセスが理解できないと言う私に「フィルム・ノワールのシナリオにはほころびがあるもので、このあたりが説明されてないけれどフィルム・ノワールにはこういうシーンが必要」なのだとか。世間に夢見る男の子は多く、いつもこんな事を考えているのですとも書かれてました。そう言うものなのね。( ̄▽ ̄)