歌人、穂村弘の「鳥肌が」がおもしろい。
書店で偶然目に付いた本。怪談話かなとパラパラめくってみると…
日常のちょっとした違和感とか勘違い、記憶違い、他人との相違と言ったことが
何とも言えぬ恐怖に繋がる… そこに何故か笑いも生じたり。
言語不明瞭で何を言ってるか判らない〇川淳二の怪談話なんぞより、歌人、
穂村弘の綴る恐怖譚の方がはるかに可笑しくて怖くておもしろい。
表紙にブツブツがあるのです。本の鳥肌…触るのが怖いです。
装丁は祖父江慎+藤井遥 挿画は、えつこミュウゼ
本の帯に書かれてる「小さな子供と大きな犬がー」これ、分かります。私も怖い。
犬好きの人にとっては聞き伝手ならぬと思うけれど、次の瞬間を想像すると背筋が凍る。
他人とのズレ…我が家のルールがよそ様の家庭では決して当てはまらぬ異端であったり、何故ここにこんなものがあるのかとか、一瞬状況が把握できなくて恐怖したり(知らぬ親父が意味不明の言葉を発し続けてる、次の瞬間理解する「この人はゆで卵を口いっぱいにほおばって喋ってるんだ。飲み込んでから喋ってよ」とか)
夜、友人のアパートの部屋で数人でワイワイやってると階上の部屋から「ドシン!」と音がした。「上の階の人は神経質だから、大きな音をたてるとああやって抗議してくる」と友人。それで声を潜めてボソボソ喋ってると今度は天井から水がしたたり落ちてくる。「ドシンの次は水なんだ」と友人。その姿を想像すると怖いと著者(大抵の人もそうだろう)
「水じゃなくて灯油とかだったらどうする?」と聞くと「匂いが違うよ」と友人。
いや、そこじゃないだろ…
「ほんとうはあなたは無呼吸症候群おしえないまま隣でねむる」
「ねえ起きて」ほっぺを軽くはたかれて思えばあれが最初のビンタ」
著者が選者を務める新聞の投稿歌も紹介している。上の歌の怖さ…
女流歌人、葛原妙子の歌も紹介されている。
「絹よりうすくみどりごねむりみどり児のかたへに暗き窓あきてをり」
次の瞬間への緊張感。歌人は言葉にも感覚にも敏感だ。
現代歌人の著者の怖がりようが、深い洞察力とユーモアで包まれていて納得がいく。
一気に読めてしまった。
ところでこの本は文庫本なのだが、本をレジに持ってゆくと「PHP文庫をお買い上げの方に差し上げています」と言って店の人がクリアファイルをくれた。
ちょっと得した気分。。。( ̄▽ ̄)