らんぷの仕業

s’il vous plait  よろしくお願いします。

バカ夫婦が映画タイトルの難読漢字に撃沈した話

今週のお題 告白します。

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30数年前の話である。S市のニュータウンの一角にある団地に一組の新婚の夫婦が住んでいた。

夫婦は夜、食後にテレビを見るのが楽しみであった。しかし、この夫婦のテレビ番組の嗜好は少しばかり変わっていた。

ドラマやバラエティ番組はまず観ない。二人とも、特に夫の方はその傾向が強く「どこが面白いのか分からない」と見向きもしなかった。妻もしかり。二人が見るのはニュース、旅番組、ドキュメンタリーなどであった。これはさほど珍しい事ではないかも知れない。だが、ここでやや珍しい類の番組が二人の嗜好に入っていた。

 

「血を吸うカメラ」 本文とは関係ありません。

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「赤い靴」の名匠、マイケル・パウエルが名声を失うきっかけになったサイコスリラー。このすぐ後に公開されたヒッチコックの「サイコ」が絶賛されたのとは対照的な結果になりました。

 

当時はまだパソコンなど普及しておらず、当然スマホもない時代。ネットはもちろんウェブなど誰も知らない時代で、つまり人々への情報伝達はテレビが担っていた。そんなテレビ番組の中に映画の情報を伝える番組が何本か存在していたのだ。

番組名はほとんど覚えていないが、「SYスクリーンアワー」などと言う番組があったのはうつろに覚えている。他の番組名はきっと「シネマガイド」とかの類であったろう。(SYとは松竹洋画チェーンの事だったと思う)

夫婦はこの手の番組が好きであった。放送時間は15分ほどで終わるのだが、酒を飲みながらボケーっと見ていられるのが良い。

 

「ブレード/刀」 本文とは関係ありません。

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中国は人口14億。日本の約10倍。映画の数も俳優の数も日本とは比較にならないみたい。趙文卓(チウ・マンチェク)、同姓同名の俳優が他にいるようだけど、私のお気に入りはこの趙文卓♪

さて、この類の番組進行はどの番組も似ていた。まず、話題の新作、大作の予告編が写され、試写会の様子や出演者の撮影時のエピソードの話なども入って、大々的に宣伝される。次に登場するのは普通に新作の類。それでも出演者へのインタビューもあったりはする。その次が2番館3番館、いわゆる名画座に架かる旧作などである。一応タイトルはナレーションで紹介される。そして、最後に紹介されるのが、これがもうタイトルなど音声では紹介されない。

映画のタイトルがテレビ画面に表示され、ご覧の作品は以上の劇場で公開中、などとテロップが流れるのみである。

そして、その映画と言うのが、聞いたこともないような、つまり18禁のポルノ映画のオンパレードなのだ。しかもこの類の映画の作品名は、難解極まりない物が実に多い。いや、素晴しいと言うべきか。

今では分別あるシニア世代の夫婦だが、若気の至りか酒の過ちか、アホな夫婦の、とりわけアホの度合いの強い夫はそのタイトルを声を上げて読むのである。妻は酔っぱらって合の手を入れる。思い出すのもおぞましい光景である。

 

「木と市長と文化会館」 本文とは関係ありません。

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フランスの田舎は気持ちよさそうだし若い女性はスタイリッシュ…良いなあ。。。(私もたまにはこんな映画も観ます)

 

それがある時、「なにこれ?なんて読むの?」夫婦で頭をひねった言葉がある。それが、巨乳。

この夫婦、真正のアホである。夫の出した答えが「きょちち」

「きょちち?」妻はちょっと首をひねったが、深く考えるのが面倒くさいので一応納得した。しばらくはこれで通った。この手の番組にこの「巨乳」が何度か登場し、その度に「また、きょちちが出た」と夫婦で笑っていたのである。つくづくアホな夫婦である。

さて、しばらくすると今度は別の新しい言葉が登場した。

超弩乳。「わあっ、これ、なんて読むの!?」妻が素っ頓狂な声で夫に訊く。夫は答えた。「ちょうどちち」

「ちょうどちち。。。?」さすがに変だ、と夫婦は思った。「この話、人にしゃべるなよ」と夫が妻に耳打ちした。「うん」妻は素直に頷いた。(しゃべる訳ないやろ)

しかし程なくして二人がこの読み方を知る機会がやってきた。某女性タレントが「巨乳」を売りにして人気を博したのだ。「きょにゅう」それが巨乳の正しい読み方だった。「ああ誰にもしゃべらなくて良かった」夫婦は安堵した。

さて、この馬鹿話にはちょいと高尚な(はあ?)続きがある。

じゃあ「超弩乳」は実は何と読む? はい「ちょうドにゅう」が正解。

アホな夫婦は超弩級の乳だと了解した。ついでに超弩級も映画会社の宣伝マンが考え出した言葉だと思い込んだ。「ええセンスしてるやん」

しかし後に夫婦はこの超弩級の語源を知ることになる。テレビの「トリビアの泉」を妻がたまたま見た時である。超弩級とはなんと戦艦からできた言葉だった。

 

「恐怖人形」 本文とは関係ありません。

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何でホラーって「なんじゃこりゃ」な作品が多いんだろ?こうなると笑うしかない。。。

 

弩級の「弩」とはイギリスの戦艦、ドレッドノートの事で日本側が「弩」の当て字をはめたのだそうだ。

ドレッドノートとは“Dreadnought”(英語)は『Dread:恐怖、不安』『Nought:ゼロ』の合成語であり、「勇敢な」「恐れを知らない」「恐怖心が無い」を意味するが、本艦がそれまでの戦艦に比べてはるかに大きかったので「(それまでに比べて)格段に大きい」「(非常に)大型である」を意味するようにもなる。ドレッドノート戦艦」⇒「ド級艦(弩級艦)」⇒「超ド級艦」⇒「超ド級(超弩級)」のように言葉が変化したと考えられている。(以上ウキペディアより)

へえ、と妻は「トリビア」を見て頷いた。てっきり映画会社の宣伝マンが知恵を絞って考えた言葉だと思い込んでいたので。いや、この言葉を持ってくるなんて、やはりセンスがあるのでは(どんなセンスだ)自分もタイトルを考えてみたいなあ等と、一時的に妄想を楽しんでいたのである。

 

以下、愚門愚答

妻「ドレットノート戦艦って知ってた?」

夫「戦艦に興味はない」

妻「超弩乳は?」

夫「好き」

妻「あほっ」

 

 


ダスティン・ホフマンになれなかったよ