らんぷの仕業

s’il vous plait  よろしくお願いします。

散歩する霊柩車

「赤い殺意」の夫婦の騙しあい

 

面白い変な映画を観た。その名も「散歩する霊柩車」

「夢のハワイで盆踊り」に次ぐアグレッシブなタイトルね(?)

それぞれ「散歩する侵略者」「死霊の盆踊り」なんてタイトルをパクられるくらいのインパクト(オマージュかな)

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この二人が主役 あれっ、今村昌平監督の「赤い殺意」の夫婦じゃないの。(両作品とも1964年の映画です)

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肉感的な女房とタクシー運転手の小男な亭主(西村晃が水戸のご老公になるのはまだ20年も先の話です)

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こんな亭主じゃ満足できないってんで女房は次々に男を作る。

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亭主は嫉妬深い。女房の後をつけて浮気の現場を押さえる。「今日、若い男と一緒にいるお前を見た。この服を着てた」と、女房に詰め寄る亭主

(私が「赤い殺意」の中の好きな場面に、西村晃が「この町でこんなに太った女はお前しかいない」と、他の男との逢引の証拠写真春川ますみに突きつけると「確かにおらに似てる。だけどこれは、おらじゃない」と、春川ますみがあくまで白を切るシーンがあります。

家に押し入った泥棒に強姦され、その後もズルズルと関係を続けるうちに、家の奴隷のように従順だった女が無自覚のまま強くなってゆく姿が痛快でした)

「散歩する霊柩車」はそんな話ではないので、売り言葉に買い言葉「そんなこと言うなら別れましょ!」逆上した亭主は女房の首を絞めて殺してしまう。。。が、が、が、ここから話がややこしい…

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その前に、女房が関係した男たち、その一 曾我廼家明蝶

会社の社長。金を持っている。選挙に出ようかと言う野心家なのでスキャンダルを恐れている。

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その二 外科医 金子信夫 わずかな金で女と手を切ろうとしている。

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その三 若い男、岡崎二郎 この人、どこかで見た顔だなと思ったら、最近はVシネによく出ています。

後ろの女は恋人の宮園順子 最初の頃の「水戸黄門」で風車の弥七の恋女房役をやっていました。

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この映画、くせのある名わき役たちが、ちょこっとだけ顔を出しています。贅沢なキャストです。タクシー運転手の花沢徳兵衛

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後ろ向きですが、ホテルマンの大辻四郎  ボリューミーな春川ますみが可愛い

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不思議な存在感を放つ役者、小沢昭一 病院の守衛

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浜村純 霊安室の係員
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この男はチョイ役では無い。西村晃に絡みます。

西村晃、結構、人を殺します。でも極悪人の匂いがしない。登場人物に悪人はいない。しかし、善人もいない。今じゃ寅さんのイメージしかない渥美清さえ善人ではない。彼が霊柩車の運転手。

「俺もたまには生きてる人間を乗せて走りたいよ」

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亭主が、殺した女房を霊柩車に乗せて、女房の男たちに最後の別れをさせてやる… 実は亭主と女房が仕組んだ芝居で、二人は金のある男たちを脅迫して金を脅し取ろうとしていた…が、が、が、二転三転…

騙し騙され、最後は…

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通俗とはこれだ! 全編に通俗の匂いがします。こんな映画、子供には見せられない。(子供にこの面白さは分かるまい)

春川ますみのなんと言うか、柔らかさ。当時なら他に三原葉子などもいたけど、三原葉子西村晃の夫婦喧嘩は血を見そうだし。(「黄線地帯」の三原葉子は無茶苦茶コケティッシュで好きですが)

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1964年と言えば東京オリンピックのあった年だけど、私(小学生でした)、この年にちょっと怪我をして外科病院に通ってまして、その待合室でたまたま手にした週刊誌に桑田次郎の漫画が載っていたのです。「ある殺人」そんなタイトルだったと思います。

ホテルのベッドで男と女がイチャイチャしてて男(既婚者)は女に妻殺しの計画を打ち明けるのです。ところが男の方がパタリと倒れる、実は女は男の妻が雇った殺し屋だった…そんな話。(私、子供の頃の漫画に関する記憶力は超人的な部分がありました)

桑田次郎エイトマンの作者。「あの桑田次郎がこんな漫画、描いてる!」ものすごいショックでした。こんなもの、子供が読んではいけない!私、壁にもたれて後ろから誰にも覗かれないようにドキドキしながら読んだのです。(読んだのか)その週刊誌に嗅ぎ取った通俗の匂い。同じ匂いをこの映画からも嗅ぎ取り、映画を観ながら突然、56年前に読んだ漫画を思い出したのです。

監督は佐藤肇 代表作は「吸血鬼ゴケミドロ」 カルト的人気のあるSFホラーです。